1.迅速凍結顕微鏡検査業務手順

1.受付
 1) 前日までに迅速診断申込書を受取り、受付テーブルに当日分の申込書を並べる
 2) 当日、手術室からの連絡(依頼)内容を受け、申込書内容と照合する
  ;患者名、手術室番号、依頼科名、検体の種類、感染症の有無
 * 問題が生じた場合
  a) 申込書が未提出の場合、術者に提出を要請する
  b) 申込書の記載不備、申込書内容と連絡(依頼)内容の不一致は、病理医がすみやかに術者に問い合わせ、正確な情報を得るとともに、申込書に朱書きで加筆修正を加える
  c) 迅速依頼が重なった場合、迅速担当者は他者に援助を求め、効率良く業務を遂行するとともに、担当病理医は術者に報告に時間がかかる旨を事前に伝える
 3) 感染防止については、検査部 感染防止マニュアルを参照

2.検体の受取りと切り出し
 1) 感染防止の為、検体受領から終了までゴム・プラスチック手袋およびマスクの着用を原則とし、マスクは結核菌等が通過しないマスクが望ましい
 2) 迅速凍結顕微鏡検査専用の気送子を使用する
 3) 原則として、検体包装をすみやかに安全キャビネット内に置き、その内で切り出しまでの作業を行う
 4) 検体が入れてある袋等の破損の有無を調べ、破損があれば運搬時血液等 が床に落ちないようビニール袋等を利用し運搬する
 5) 検体包装の記載内容を確認し、申込書内容や連絡(依頼)内容と照合する:患者名、手術室番号、検体の種類
 * 問題が生じた場合
  a) 記載内容に不備、事前内容との不一致があった場合、担当病理医は手術室に問い合わせ、確認をとる
  b) 検体の種類と事前内容とに不一致があった場合、担当病理医は直ちに術者に問い合わせ、確認をとる
 6) 大型検体の場合、直接、病理検査室に提出してもらい、必要に応じて写真撮影する
 * 写真撮影は、手術材料検査法を参照
3.切り出し
 1) 原則として、安全キヤビネット内で作業する
 2) 病理医または、病理医の指導のもとで検査技師が、標本作製面を決める
 3) 複数の検体がある時は、混在しないよう位置を整理して置く。
 4) 断端評価の際の標本作製面は、術者の指定がない限り、組織の最大割面を原則とする
 5) 固定後の永久標本(最終診断)に支障をきたさない切り出し方をする
 * 問題が生じた場合
   i) 検体の量、形状、方向性に問題があった場合、担当病理医は術者に問い合わせ、確認をとり、標本作製面を決定するか、もしくは術者に追加提出を要請する
   ii) 検体の焼却部、挫滅部は可能な限り標本作製面から避ける。術者指定部位に広範な焼却部、挫滅部が存在する場合はa)に準拠する
   iii) 検体が少量で、追加提出不能の場合、担当病理医は永久標本(最終診断)を考慮して、術者に相談し、迅速診断を行うか否かを判断する
   iv) 特殊検査を要する検体について担当病理医はその組織処理を検査技師に指示する

4.包埋・凍結
 1) コンパウンドにまぶし、薄切面を上にして台座に載せ液体窒素で凍結する
 2) 検体全面が薄切されるように台座に平行に載せ凍結する
 3) ブロックに亀裂が入らない程度に充分凍結する
 4) 液体窒素で凍傷にならないように注意する

5.薄切
 1) クリオスタットで薄切し、スライドグラスに貼付する
 2) 粗削りを行う時は窓を閉鎖し、本標本用薄切時においても顔をクリオ
スタットに近付けない
 3) 目的の面が全面出ることを原則とするが、極小検体では粗削りで削り過ぎないよう注意する
 4) 迅速が複数個同時の場合、予め番号をスライドグラスに記入しておく
 5) ブロックは病理医の指示があるまで庫内に保存する 
 6) クリオスタット内の刃で指等を損傷しないように注意する

6.固定
   ガラスに切片を貼布後、速やかに固定液に投入し固定する
   * 固定液は、ホルマリン原液1:アセトン9の割合とする

7.染色
 1) 簡易HE染色を行う(生検材料検査法を参照)
 2) コンタミ防止のため、染色液等を充分管理し、切片を乾燥させない

8.封入
 1) 自動封入機により封入する
 2) 機器の保守を的確に行い、使用前に封入フィルム、キシレン等の有無を点検し、必要量あることを確認する
 3) 最初の動作時封入機を目視し、正常に動作するか確認する

9.標本の提出
 1) 担当検査技師は、診断に適する標本作製を行い、標本のチェックを行う
:凍結、面出し、組織の厚み、染色、コンタミネーション
  * 問題が生じた場合
  a) 担当技師は担当病理医に相談し、標本の再作製を行う
  b) 標本の再作製により報告が著しく遅くなる場合、担当病理医は術者にその旨を連絡する
 2) 担当病理医は標本性状をチェックする
  * 問題が生じた場合
  a) 担当病理医は診断に不適当と判断した場合、担当技師に標本を提示し、標本の再作製を指示する
  b) 標本の再作製により報告が著しく遅くなる場合、担当病理医は術者にその旨を連絡する
 3) 複数の迅速検査が行われている場合、担当病理医は、標本記載ナンバー、組織形状が提出検体と矛盾しないか逐一確認する
  * 問題が生じた場合
担当技師に問い合わせ、標本の由来を確認する

10.業務のサポート
 担当病理医、担当技師が不在あるいは業務多忙の場合、他の病理医、検査技師が業務をサポートし、安全かつ効率の良い検査を行う

11.診断と報告
 1) 見落とし防止の為、検鏡は必ず弱拡大で組織全体を見てから、強拡大で観察する
 2) 必要であれば、申込書記載内容を補充する臨床情報を術者から聞く
 3) 診断に不適当な組織、細胞は無理に診断しない
  * 問題が生じた場合
術者にその旨を連絡し、必要であれば再提出を要請する
 4) 診断に自信が持てない場合、他の病理医に内部コンサルテーションする
 5) 難解な症例は術者と充分話し合う
  :診断の保留、永久標本用を含めた充分量の組織の提出、特殊検査の為の組織処理
 6) 診断報告は術者に直接伝え、術者に報告内容が理解されたことを確認する
 7) 診断に用いた標本は永久保存する

12.報告後の検体処理
 1) 原則20%ホルマリン固定、または手術室へ返却する
     * 手術室への返却は、病理医の指示に従う
 2) 検体、依頼伝票および標本瓶の患者名等が一致することを再確認する
* 不一致の場合、各検体や手術予定表 等を、確認する
 3) ブロックをはずす時、庫内の刃で損傷しない

13.結果処理
スキャナーで伝票を取り込む

14.電算処理
 1) 迅速検査が入力されていることの確認と、実施個数の訂正入力
 2) 術中迅速検査が入力されていない時は、回数を含め入力し、迅速検査の有無、患者名I.D等を医事課に訂正伝票で通知する

15.当日分の迅速検査完了の確認
 迅速担当者は、当日分の迅速予定が全て終了したか否かを、手術室に確認し、担当病理医に伝える

16.迅速終了後の、クリオスタットの衛生管理
 1) 感染症実施時はその日の予定終了後、ホルマリン薫蒸する
 2) 毎週金曜日に業務終了後、ホルマリン薫蒸する。

17.迅速標本作製機器の管理
 予備機も含めた定期点検を行い、常時使用可能な状態に保つ
  * 機器の故障が生じた場合
  a) 直ちに原因を究明し、対処する
  b) 対処できない場合は、メーカーに連絡し、修理を依頼する
  c) 病理科総括医長に連絡する
  d) 総括医長は、関連部署へ速やかに連絡し、対応策を協議する
  e) 病理科職員は、可能な限り早く、再発防止策を施す
  f) 機器の故障と修理を記録に残す

18.整理保管
 1) 迅速凍結標本は、一般の組織検査と同一扱いとし、永久保存する
 2) 患者名および標本の形態等から、永久用組織標本と同一症例であることを確認する
 3) 迅速凍結標本、迅速の永久標本ともに、正規のラベルを貼り、保存する