目 次

血液型

ABO式血液型

【定義】

 ABO式血液型は1900年、Landsteinerによって発見され、A、Bおよび0の3種の遺伝子(第9染色体)からなり、Mendelの法則に従って遺伝する。AおよびB型抗原を決定する物質は糖であり、共通の前駆物質をもつ。
この前駆物質に糖転移酵素であるL-フコシルトランスフェラーゼが作用すると、前駆物質の末端糖であるD-ガラクトースにL-フコースが付加され、H抗原(物質)の糖鎖構造となる。このH抗原の糖鎖末端(D-ガラクトース)にさらに糖転移酵素が作用し、A型ではNーアセチルガラクトサミン、B型ではD-ガラクトースが付加され、A抗原とB抗原の糖鎖構造となる。一方、生下時の新生児血清中の抗Aと抗Bは母親由来の抗体(IgG)のみで、生後3~4ヶ月ころから新生児本来の抗体が産生されはじめ、その後抗体価は急激に上昇し、5~10歳ころをピーク加齢とともに抗体価は少しずつ低下する。

 赤血球上にA抗原、血清中に抗B抗体を有するものをA型、赤血球上にB抗原、血清中に抗A抗体を有するものをB型、赤血球上にAおよびB抗原、血清中には抗体を欠くものをAB型、赤血球上にAおよびB抗原を欠き、血清中に抗Aおよび抗B抗体を有するものをO型といい、Landsteinerの法則という。
したがって、ABO血液型の判定には赤血球上のAおよびB抗原の存在を確認するオモテ検査と、血清中の抗Aおよび抗B抗体の有無を確認するウラ検査を行い、双方の成績が一致してはじめて判定される。

ABH抗原の生成過程

【検査法】

・ ABO血液型  :   オモテ検査(赤血球側)・・・試験管法、スライド法、カラム凝集法~ゲル法・ビーズ法

              ウラ検査(血清・血漿側)・・・試験管法、カラム凝集法~ゲル法・ビーズ法

・ Rho(D)血液型  :     ・・・・・・・・・・・・・・・・試験管法、カラム凝集法~ゲル法・ビーズ法

【試薬】

・ABO血液型

   オモテ検査 ①抗A血液型判定用抗体(抗A)

         ②抗B血液型判定用抗体(抗B)

         ③抗A、B血液型判定用抗体 ※(抗A、B)

         ④抗A1レクチン ※

         ⑤抗Hレクチン ※

     ウラ検査 ①抗A1赤血球

          ②B赤血球

          ③O赤血球 ※

・Rho(D)血液型

           ①抗D血液型判定用抗体(抗D)

           ②Rhコントロール ※          (※ : 必要に応じて準備・使用)

【方法】

  基本的には使用する試薬メーカーの使用説明書に従って検査を実施するべきであるが、一般的な操作方法を記載する。

 ①4本の試験官に検体番号または患者名を記入し、A、B、A1赤血球、およびB赤血球の記号をつける。

 ②ウラ検査用試験官には患者血清(血漿)を各々2滴滴下する。

 ③それぞれの試験官の記号を確認しながら該当する試薬を1滴ずつ滴下する。

 ④調整した約3~5%患者赤血球浮遊液(※)を、抗A、抗Bの試験官にそれぞれ1滴ずつ滴下する。

 ⑤各試験官を十分に混和し、3400rpm(900~1000G)/ 15秒遠心する。

 ⑥凝集の有無・強度および反応の状態を観察記録する。

 ⑦ABO血液型は下記の表の判定基準に従い判定する。

  ※ オモテ検査に用いる患者赤血球浮遊液の準備

       生理食塩液で3~5%に希釈した赤血球浮遊液を作る

       (生理食塩液約1mlに赤血球沈層を1滴加えると約3~5%になる。)

【ABO血液型の判定基準】

  オモテ検査(赤血球側)  ウラ検査(血清側)
血液型    抗A   抗B   A1赤血球  B赤血球 
 A     (+)  (-)   (-)    (+)
 B     (-)  (+)   (+)    (-)
 O    (-)  (-)   (+)    (+)
 AB    (+)  (+)   (-)    (-)
 
抗血清

      【販売各社における、モノクロ-ナル抗体の種類】

販売元 オ-ソ カイノス 国際試薬 三光純薬  ビオテスト  和光
 抗A 2種類 1種類 2種類 1種類 1種類 2種類
 抗B 3種類 1種類 2種類 1種類 1種類 2種類

≪ モノクローナル抗体とは・・・ ≫

 1個のB細胞、または1個の細胞より細胞分裂によって生じた均一な

 細胞集団によって産生された抗体である。従って、抗原分子の特定の

 抗原決定基のみを認識する。抗体の特異性のみならず、クラス、サブ

 クラス、親和力なども均一な抗体の集団である。

≪ モノクロ-ナル抗体試薬の特徴 ≫

 1.ロット間差が生じにくい。

 2.安定供給が望める。

 3.ヒト由来と違って、感染症の心配がない。

 4.汎血球凝集を示さない。

 5.モノクロの試薬は有効期限が過ぎると急激に力価が低下する。

≪ 詳細 ≫

  民族差があり、パラグアイやアメリカンインディアンにおいては、O型が圧倒的に多いことが知られている。

  ABO血液型物質(抗原)は、糖鎖sugar chain上に存在している。基本的な糖鎖構造にフコースfucoseという糖が付加された糖鎖(H抗原)があり、これにさらにN-アセチルガラクトサミンあるいはガラクトースが結合したものが、それぞれA抗原A antigen、B抗原B antigenである。これらの糖は、転移酵素transferase(各々H、 A、B転移酵素という)により糖鎖に付加される。しかし、O型のヒトはA、Bいずれの酵素活性enzyme activityももっていないため、H抗原H antigenのままである。なお、H転移酵素活性がないヒトでは、H抗原のみならず、 A、B抗原をすべて欠損しており、ボンベイBombay型と呼ばれている。ABO遺伝子は、第9番染色体長腕上にあり、進化論的には最初にA遺伝子ができ、変異によりB遺伝子とO遺伝子が生じたと考えられている。この変異は、A酵素活性の変化(B転移酵素)と消失(O転移酵素)をもたらした。したがって、A遺伝子とB遺伝子との間には優劣関係はなく、一方O遺伝子はA、B両遺伝子に対して劣性recessiveとなる。ABO血液型においては、血清中にA型では抗B、B型では抗A、O型では抗Aと抗B抗体を有しているが、これは食物や細菌中のA型、B型抗原物質が免疫原となり産生されたものと考えられている。また、血液型は終生不変と考えられてきたが、白血病などの 血液疾患においてA型からO型への変化や、大腸炎や大腸癌などの大腸疾患時にA型からB型への変化が報告されている。

◆[MENU]

Rh血液型-D陰性確認試験

MNSs血液型

P血液型

Lewis血液型

Kidd血液型

Kell血液型

Duffy血液型

Diego血液型

Xg血液型

Ii血液型

ABO式血液型オモテ、ウラ試験不一致?

レクチン

凝集反応の見方

検体の取り扱いについて

検体の取り扱い

産科危機的出血対応フローチャート

心臓外科手術前検体の扱い

赤血球型検査(赤血球系検査)ガイドライン

赤血球型ガイドライン

輸血選択用赤血球型ガイドライン

抗体スクリ-ニング

抗体スクリ-ニング(意義)

生食法

ブロメリン法(ブロメリン非特異反応)

アルブミン法

PEG法

LISS法

ク-ムス法

血液型抗体の反応態度・日本人適合血%

抗体の同定

抗体同定法

(不規則抗体スクリーニング・同定に必要な知識と情報、抗体の頻度、血球抗原の選び方 )

直接抗グロブリン試験

直接抗グロブリン試験

直接抗グロブリン試験陽性時の対応

抗体解離試験

吸収(吸着)試験

&color(,yellow){''直接抗グロブリン試験が陽性となる可能性のある薬剤 

直接抗グロブリン試験が陽性となる薬剤の作用機序 

薬剤の作用機序図''}; 

抗体

抗体について

  • 自己抗体 ①冷式抗体 ― 冷式自己抗体
          ②温式抗体 ― 温式自己抗体
  • 同種抗体 ①冷式抗体
          ②温式抗体
  • 抗薬物抗体 ①免疫複合抗体
          ②免疫同種抗体
  • 寒冷凝集素

疾患

自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia)AIHA

常温型自己免疫性溶血性貧血

寒冷凝集素症(cold hemagglutinin disease)CHD

発作性寒冷血色素尿症

アナフィラキシ-反応

母児血液型不適合

   母児血液型不適合

新生児溶血性疾患(hemolytic disease of the newborn)HDN /  ABO不適合

Rh不適合

交換輸血

抗体価

IgM抗体の不活性化(2-ME,DTT)

交差適合試験

交差適合試験

緊急の場合(参考)

大量輸血時

新生児・乳児

T&S(参考)

MSBOS

SBOE

輸血実施に関する判断

輸血実施に関する判断

  • 不規則抗体陽性時
  • 自己抗体陽性時
  • 寒冷凝集反応
  • 新生児輸血

非特異凝集

非特異凝集 

白血球血小板抗体について

抗白血球抗体

HLA抗原  (リンパ球細胞毒試験(LCT)

リンパ球混合培養試験(MLC))

血小板特異抗原

血小板抗体 (混合受身凝集法(MPHA)

抗血小板抗体の臨床的意義)

輸血副作用

輸血副作用の種類

  • 即時型副作用
  • 遅延型副作用
  • 溶血性輸血副作用
  • 血管内溶血性副作用
  • 血管外溶血性副作用
  • 遅発性溶血性副作用
  • 非溶血性輸血副作用
  • 輸血後GVHD
  • アナフィラキシ-反応

副作用予防対策

  • 検査室の対応
  • ABO不適合輸血時の治療指針

院内での検体の流れ

院内での検体の流れ(参考)

こども病院輸血マニュアル

血液製剤の適正使用

輸血療法の考え方

  • MAP
  • RCC-LR
  • MAP(小児)
  • 濃厚血小板
  • FFP
  • アルブミン

輸血の実際

  • 投与量の算定
  • 輸血速度
  • 血液に対する放射線照射

自己血輸血

緊急時の輸血

  • 大量輸血時の適合血
  • 交差適合試験の省略

輸血実施手順書

輸血効果の評価

  • 新生児・小児に対する輸血検査基本
  • 新生児・未熟児に対する輸血検査
  • 新生児・未熟児に対する輸血検査(交差省略)
  • 未熟児に対する輸血

参照動画

  • 血球浮遊液の作成 1 2
  • 血球洗浄器での洗浄法
  • 抗血清と検体との攪拌
  • 凝集判定ガラス板法 1 2
  • 凝集判定時の試験管の振り方 1 2 3 4
  • 凝集の判定 
  • カード法 交差適合試験
  • カード法 直接抗グロブリン試験
  • カード法 血液型
  • cis A2B3 Mono Human

輸血関連Q&A

Q&A

 

輸血関連書類

  • 分画製剤輸血同意書
  • HIV抗体検査承諾書
  • 血小板異型輸血同意書
  • 輸血承諾書
  • 輸血療法の実施に関する指針
  • 血液製剤の使用指針
  • 血液製剤等に係わる遡及調査ガイドライン
  • 血液製剤等に係わる遡及調査ガイドライン Q&A
  • 赤血球型検査(赤血球系検査)ガイドライン